月曜日のフランス語講座では、『方法叙説』第五部を読み進めています。第四部ではデカルトの形而上学が述べられましたが、第五部では自然科学が扱われます。デカルトの自然科学への貢献はデカルト座標系を初めとして近代科学の枠組み自体といえるものであり、その重要性は他の部に劣りません。
実は第五部の冒頭は、自然科学等の問題について自分が得た真理をお見せできたら嬉しいのだが学者たちの間の論争に鑑みてここで深く立ち入るのは差し控える、といったものになっていて、これには出版当時の言論状況が影響しています。すなわち、『方法叙説』出版の1637年は、ガリレオ・ガリレイの『天文対話』発刊の1632年とその死去の1637年のまさに中間にあるのです。この当時デカルトは非常に慎重に振る舞っていて、原稿を書き進めていた『世界論』の出版も取りやめていて、『方法叙説』においてもその姿勢は変わりません。
それをふまえて第五部を読めば、一見穏やかな文体にもデカルトの強いメッセージを見ることができます。スコラ哲学者達の扱う難問を直ちに解決し、あらゆるものが従う規則を発見し、それによって学校で学びまたこの先学びうると思ったよりはるかに有益で重要なものを知り得た、とはぎりぎりの危機管理の下での最大限の主張ではないでしょうか。こうしたメッセージを得るために想像力を働かせること、また言論におけるバランス感覚を学ぶこと、デカルトの文章からはまだまだ得るものが多いように感じます。
(板尾)