104回目の今日は、新しく届いた書物の紹介、及びそれらに関係する事柄の解説が行われました。
一冊目はアマルナ文書のアッカド語に関する研究書です。アマルナ文書とは、エジプトのテル・エル・アマルナから出土した楔形文字の史料で、諸国の間で取り交わされた書簡を今日に伝えるものです。当時はアッカド語が lingua franca として用いられていましたが、非母語話者によって書かれた文章には自ずから独自の語法が見られるようになります。今回購入された書籍は特に動詞の用法を研究しています。 併せてクヌートソンによるアマルナ文書の翻訳も紹介されました。クヌートソンはアマルナ文書の全書簡をローマ字転写し、ドイツ語による翻訳及び研究・索引を付けて出版しました。ところがアマルナ文書にはアッカド語文法では解読できない文書が含まれていました。クヌートソンはその翻訳は行わず、仮に arzawa 語と名付け、インド・ヨーロッパ語族であると推定しました。後にヒッタイト語が発見・解読されると、クヌートソンが arzawa 語に帰した文書はまさにヒッタイト語で書かれていることが判明しました。インド・ヨーロッパ語族であるとしたクヌートソンの推定は当を得ていたということになります。
二冊目はアレンによる古エジプト語・ピラミッドテクストの文法書です。エジプト語は次期により古・中・新の三期に分かれ、通常中エジプト語が標準的なものとして学ばれます。いままで中エジプト語の文法書を出版、改訂を重ねてきたアレン氏は、ピラミッドテクストの解読に着手し、全六冊のシリーズを世に問うとのことです。蓋し畢生の大事業、この世にいる内に全ピラミッドテクストを読み尽くそうという気概でありましょう。
ピラミッドテクストとは、ピラミッド内部の壁面等に記された呪文で、古王国・第五王朝の時期から出現します。時代が下がると文字が棺に記されるようになり、それはコフィンテクストと呼ばれます。
三つ目はスンパケンポの『パクサムジョンサン』、チベットで書かれたインド仏教史です。古のインド人は歴史書を残さないことで知られますが、仏教についても例外ではなく、仏教史を知るにはこの書によらねばなりません。原典世界史もいずれ仏教を扱うべく歩を進めておりますが、視野をインドに限ることなく、ユーラシア大陸で起こった一事象として仏教を捉えた場合、それがいかなるものとして立ち現れるか、探求がなされる予定です。
(三村)