『原典黙示録』第36回 講義録
田中大
「黙示録」を語るためには、時代との距離が必要である、すなわち反時代的でなければならない。恬然として時代と同衾し続ける者は時代と共に滅びゆく。彼らは語られる対象ではあり得ども語る者ではあり得ない。
原典研究所は最も時代から自由であり、ゆえに最も鋭く反時代的である。これは時代から取り残されているということを意味しない、むしろ最も俊敏に時代の趨勢を追っている者だけが最も尖鋭に反時代的でありうるのだ。そのうえ先生が時代を追う精神は〈人文学〉の広い見識と深い造詣に裏打ちされている。原典の講義が常に時宜を得たものであるのは、このためである。
これまで先生はエーコが遺した現代の「端緒」についての語りを余すところなく聴き取り、語り直してきた。そしてその正確性ゆえに、それは必然的に「黙示録」として語り直されることとなった。
〈テクスト〉は記述論が命懸けで嬴ち取った自由な空間の中で語り直され、若木が思うさま天に枝葉を広げるが如くに、何者にも歪められていない本当の姿を現した。こうして語り出された黙示録は、もはや単なる未来の予測に止まらず、時代と対峙し戦うための実践哲学たり得るのである。