『原典黙示録』第41回 講義録
田中大
倦まず弛まず現実に先んじて駆け抜けてきた本講義も、いよいよ2年目に突入した。講義の冒頭では、先生によって『原典黙示録』全体の構成が提示された。
上編:『プラハの墓地』
中編:『予告された殺人の記録』
下編:【ワシントン(D.C.)の墓地】
「上編」とはすなわちこれまでの40回に亘る講義の全体を指し、そこにおいて明らかにされたことは、前回までの講義録に記録されている通りであり、また今となってはここ数ヶ月で現実に起こった事態を顧みることによっても確かめることができる。そしてそこで参照された作品は、U・エーコ『プラハの墓地』であった。
「中編」においては、今まさに起きていること/起きつつあることが論じられる。そこで参照されるのは、G・マルケス『予告された殺人の記録』Crónica de una muerte anunciadaである。歴史を正確に理解する者にとってはあたかもすでに予告されているかの如く明白な事態が、今生起しつつあるのだ。
「下編」においては、この一連の「大変動」の終局について語られる。ここで先生によって提示された【ワシントン(D.C.)の墓地】は実在しない虚構の作品であるが、まさにこの作品が措定されることによって、現在から未来に待ち受ける結末へと――それはまさしく〈現代史〉の終着点であるに違いない――鞏固な一本の橋が架けられることになるだろう。
未来について正確に語るためには、無根拠な予言が全く無用であるのは当然のこと、諸事実の分析に基づく厳密な因果的予測を以てしても十分ではない。ではひとはいかにして未来の歴史について論ずることを得るのか。先生曰く、歴史は繰り返さない、人間が同じことをするだけだ、と。これまで原典研究所において開講されてきた諸講義において、人間の思考の枠組みを規定するあらゆる思想は、それが〈テクスト〉の中に芽吹く瞬間にまで遡ることによって生きたまま把捉されてきた。こうした記述論的方法こそが本講義においてなされている比類なき歴史記述事業の鴻基なのであり、その先に見渡されるものをありのままに語ること、これが未来について有意味に語るための唯一の手立てなのである。