『原典黙示録』第70回 講義録
田中大
今回は、前回に引き続き、9.11以後のTIME誌のアーカイブが通覧された。9月24日号の表紙には、ブッシュ大統領が星条旗を掲げて瓦礫の上に立つ写真に“Digging out and digging in for war”という言葉が添えられている。ここから、1979年以来20年以上続いてきた騒擾が新たな局面に移ってゆくことになる。
10月1日号の表紙には、大写しのウサーマ・ビン=ラーディンの顔写真の上に“TARGET: BIN LADEN”と掲げられ、物々しい雰囲気が醸し出されているが、このビン=ラーディンを引き渡さないタリバーンに対し、いよいよアメリカは武力行使に出る。10月7日にはアフガニスタンへの空爆が開始されたが、10月8日号の表紙の“PREPARING FOR BATTLE/The U.S. redies its all-out assult against terror”というヘッドラインは、まさに戦争の火蓋が切って落とされようとしていることを告げる。そして次の10月15日号の表紙には“CAN THE U.S. STOP THE RAGE?/ Bush’s challenge: military action alone could inflame Muslims worldwide, so he must try to win their hearts and minds. Here’s the strategy”とあり、アメリカの攻撃に対して世界中のムスリムから激しい怒りが沸き起こった様子が生々しく伝えられている。
さらに翌週10月22日号のヘッドライン“STRIKING BACK/The war on terror begins with air assults. Next phase: sending in the ground troops”はついに本格的な戦闘が始まりつつあることを示し、また11月5日号のヘッドライン“ON THE SPOT/Fighting elusive foes at home and abroad, Bush and his team are feeling the heat”からは、この戦争が泥沼にはまり込んでいく兆しが読み取れる。その後、11月には12日号“INSIDE AL-QUAEDA BIN LADEN’S WEB OF TERROR”、26日号“Inside The Manhunt”のいずれにもビン=ラーディンが表紙に登場しており、本誌はこの大事件の主犯を大々的に取り上げているが、結局彼が発見、殺害されたのはそれからおよそ10年後のことであった。そしてこの終わりのない戦争がアメリカの敗北によって終結するまでには、そこからさらにまた10年の歳月を経ねばならなかったのである。
このように世界史の転換点を地上の視点から眺めることは、通常歴史を理解しようとするときのように、上空から俯瞰して見ることとは全く異なる営みである。実地に地上を歩かねば、多くの重要なことがらを見落とすことになる。この確かな歩みと、いかなるイデオロギーからも自由に飛び回る思考力とをいずれも十分に駆使することこそ、制度的な歴史学の呪縛から逃れた形で歴史を語り出すための必要条件であろう。
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先生によって強調されたのは、目下の事態の中で、以上に概観した一連の事件についてもその意味が改めて問い直されねばならないということであった。次回の講義では、それらに関する諸問題について、現在の観点から新たな光が当てられることになるだろう。