講義紹介 2018年3月13日 ドイツ語講座(「歴史の形態学」実演)

シュペングラーは宮田さんの記事で取り上げられたEinleitung, §2の冒頭で断定的な命題を提示して読者の意識を方向付けます。
その後、§2、§3では二つの異なる方法を言い換えたり、具体例を挙げることで、この命題に自分で註を付けるようにして読者の理解を深めようとします。
自然の形態学と歴史の形態学、自然としての世界と歴史としての世界、機械的な世界の印象と有機的な世界の印象、空間と時間、数学的な数と年代的な数……

そして、後者の方法は「政治的な」諸事実を因果関係で説明するのではなくて、宗教、社会、芸術などを含む時代全体を内的に関連付けるものです。

今日は先生がシュペングラーの方法を実演しました。

そのひとつが、江戸時代の政治経済に対する朱子学の影響です。
朱子学の重農主義に依拠し、幕府財政は米を中心に運営され、官僚である士が農民から年貢を取り立てる。工商は卑しいものとして税をとらないので、農民に五公五民のような重い負担がかかる。
工商から幕府収入を得ようとしたのは田沼意次だが、商人と癒着していると非難され失脚した。
こうした弊害を持つ朱子学に対し、伊藤仁斎、荻生徂徠らは朱子以前の古註を参照して儒学のテクストを読解した。儒学は政治学でもあった。だから田沼失脚後の松平定信の執政期に「異学」が弾圧されたのである。
また、朱子学のレジティマシーの見方は王道と覇道の二元論である。これを本朝に当て嵌めれば朝廷と幕府になる。幕府の採用したイデオロギーが尊王運動を生み出すことになった。

データの収集と分析による実証研究、下部構造が上部構造を決定する唯物史観では、人間の思想と文化が歴史において果たした役割を正当に評価できません。
シュペングラーがランケ、カント、マルクスらと異なる方法で真理を探究するという態度を表明している理由がここにあります。

(阿部)

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