『原典黙示録』第28回(10/10) 講義録

『原典黙示録』第28回 講義録

田中大

この講義において先生によって披歴される「読み」の特徴は、テクストを押し戴くという仕方においてではなく、あくまで同じ書き手、すなわち「同業者」の立場から、テクストの仕掛けを解剖してみせるということである。それは単なる知識の伝達という形式をとらず、「黙示録」として語り出される一つの体験として伝授されるものである。『プラハの墓地』の企図は、シモーネ・シモニーニ自身の憎悪を読者に「説明」するのではなく、読者による追体験を可能ならしめる形で〈記述〉することにある。したがって以上のような本講義のスタイルは、まさにこの作品を論じるに最もふさわしいものである。

第26回の講義において先生から解説があった通り、近代において、ヨーロッパのユダヤ人が栄華を極めたのは19世紀のことである。今回の講義においては、先生によってこの時代のイメージがより具体的に示される中で、マルクスこそがこの小説の裏の主人公であるということが示された。彼はフロイトと異なって直接的に作品には姿を現さないが、彼もまさにこの作品の舞台となっている時代を生きたのであり、その思想が時代に及ぼした影響は小説の端々から滲み出している。

彼の共産主義思想は、プロレタリアートによるブルジョアジーへの憎悪を原理とする。憎悪を主題とする本作品を読解するうえでは、このことを理解することが不可欠である。しかし、20世紀に未曽有の大虐殺を引き起こしたこの共産主義思想の非常に強烈な憎悪でさえも、歴史の中で延々と繰り返されてきた憎悪の連鎖の近代における一つの現れに過ぎない。では、この憎悪の連鎖は一体何に端を発するのか。先生は次のように答える。世界の全てを憎む人々である、と。

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